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「ほら早く行かないと庄司たちとはぐれちゃうよ! 佐野、急いで!」
分かった、と応じようとした瞬間、ポケットに入れていた携帯が震えた。取り出した先に表示された名前に一瞬息を呑む。
……なんで今、かけてきてんの、おまえ。
驚愕と、躊躇いと、隠しきれない嬉しさとが綯い交ぜになったまま、「悪い」と栞に声をかける。
「ちょっと、電話。悪ぃけど、庄司たちと合流して先行ってて」
「了解! ちゃんと後で連絡してねー!」
大きく手を振った栞が前方を行く二人と合流したのを視認して、通話ボタンを押す。飛び込んできたのは、このところずっと頭から離れてくれなかった後輩のもので。
「先輩! うわ、出てくれた! マジ嬉しいんスけど、ねぇ、俺のゴール見た!?」
「見てねぇわけねぇだろ。っつか、おまえこそ電話していいのかよ」
「うん、いいの! ちょっとだけだから! ねぇ、先輩、俺、どうだった?」
本当、折原はおまえに褒めてもらいたがるよな。だから犬なんだってあいつ。絶対犬属性だろ。佐野に構ってもらって嬉しいとか絶対あいつマゾ。
うっせぇな、おまえら。他人事だと思って好き勝手言ってんなよ。
げ、やべぇこっちに飛んできた。マジこえー。佐野先輩怖いっすよー。
似てねぇ物まねするんじゃねぇよ。こらおまえら、あんまり騒ぐな。
――なんであの頃とは違うって思いきったはずなのに、こんなするっと脳裏に浮かぶかな。
昔のチームメイトの声が次々によぎってくるけれど、不思議とあまり嫌だとは思わなかった。
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