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「だから今日はいつもより多いんだよ」
と、富原が嬉しそうにジョッキに口を付けた。
当たり前の様に富原の隣に座ってしまったが、入れ代わり立ち代わり、あのころのチームメイトたちが話しかけにくる。
姿は当然、大人びているのに、このメンバーで集まっているからなのか、あのころと変わらないように思えた。
「佐野が来るって言ったら、みんな絶対来るって言ってたよ」
柔らかい声音に隣を見上げる。中学時代からずっと同室だった戦友は、昔のままの思いやりに満ちた色を瞳に乗せていて。変わんねぇなぁと思う。
周りの世話ばっかり焼いて自分のこと後回しにして、そして、人の幸せを心の底から喜んで。――悲しみを隣でただ静かに共有しようとしてくれていた。
「……そうか」
折原とはまた違う特別感は、戦友と言うよりかは親友に近いのだと思う。言葉にすると恥ずかしいが、深山を退学してからもずっと連絡を取り続けていたのは、富原だけで。そして富原が居なかったら、俺はこんな風にこの場所に来ることもなかっただろう。
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