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─────ごめんね。本当に、ごめん。
そう聴こえた。気を抜けば風に流されてしまうような、か細い声で。空気の抜けるような音で。
そうして目の前の彼女は、静かに息を引き取った。
俺の腕の中に眠る女の子は、赤黒い色に侵食されていて、今でさえ僕を飲み込もうと広がりを続けている。
また1人。ヒロインがいなくなった。
同級生、それも中学生の時のほんの少し仲の良かった子なのにもかかわらず。
いや違うか。
関わったからだ。─────この俺と、少しでも関わったから。
だから、この子はこんなにも血を流して、血に包まれて亡くなってしまった。
これで俺のヒロインがいなくなるのは何度目だっけ。いつからだっけ。
もう覚えていないんだけれど、それでも。
彼女の涙と、彼女の言葉は忘れない。
心でそんな誓いを〝いつものように〟打ち立てたところで、俺の耳に町中の喧騒が戻ってきた。
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