絶対的ヒロイン。群青 色々─ぐんじょう しきしき─

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01 いつものように。何事もなかったかのように。 俺はクラスに吸い込まれていく。 自席へ腰を下ろすと、教室内は噂話でごった返しになっているのがよくわかる。 転校生が来るという噂。 誰と誰が付き合っているという噂。 オカルト系おまじないの噂。 この学校には部活に名前を連ねてない部があるらしいなんて話も。 そして。 ─────昨日の轢き逃げ事件の噂話。 『昨日、池袋の大通りで女子高生が轢き逃げにあったらしいんだけどさ、結構酷かったらしいよ。彼氏さんも泣いて抱きしめてたらしいし』 なによりも耳を劈く話し声。 意識してもいないのに、なによりもクリアに耳に届くクラスメイトの音を消し去りたい衝動に駆られる。 彼氏じゃねェし。好きでもないし。泣いてないし。 なんでもかんでも色恋沙汰に繋げる恋愛脳に辟易して、誰にもわからないように深い呼吸を1度だけ。 当事者じゃない女生徒達は、どこかフィクションの世界のお話かのように軽い気持ちで話しているんだろう。時折笑い声をあげながら談笑している。 ちろっと横目に盗み見ると、恍惚といった表情を浮かべて口を開くところだった。 『でも好きな人の腕の中で死ねるってちょっといいよね。人生ってツライし』 実際に目の当たりにしていないからこう言えるんだ。 現実とは何処か乖離した、起こり得ない範囲での話だと勝手に決めて、自分には平穏な日々が送れると心の奥底で安心しているからこそ出る言葉。 俺は、目を瞑れば焼き付いた光景が瞼に浮かぶ。瞑らなくても思い出せる。 鉄の塊に鈍く撥ねられ、アニメのように人の身体が飛ぶ瞬間を。
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