水妖の棲む森へ

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恐怖と興奮で、か細い声が上擦る。 「私、ずっとピュニティヴ・ジャスティス(因果応報)なんて嘘だって思っていました」 アンは短く息を吸うと、胸の内に溜まっていた鬱憤を吐ききるようにまくしたてた。 「サラは美人だから皆からちやほやされて、友達同士で集まって毎日楽しそうに生きていて。どうして私は誰にも何もしてないのに、こんな目に遭わなきゃいけないんだろう。サラは間違ってるのに、どうして誰もサラを咎めないんだろうって思うと、すごく悔しかった」  充血し、爛々と光る少女の瞳が湖を捉える。老医師は口を挟もうとせず、黙って話を聞いていた。 「でも、彼女は罰を受けました。神様は私たちのことをちゃんと見てくれているんだなって思うと、嬉しくて。なんだか、とても嬉しくて」  熱に浮かされたように語り続けるアンを素っ気なく見遣り、老医師は口を開く。 「…………君の魔女狩りへの興味は、鬱屈した感情のはけ口だったのかもしれないね」  そう告げると、アンは不思議そうに教諭を見返した。 「しかし、そう思ってくれるなら、私も嬉しいよ。ここで見たことを口外されては困るからね。もっとも……」  少女を飲み込んだ湖にはすでに、波紋一つ無い。湖面は何事もなかったかのように、しんと静まり返っている。 「口外したところで、湖から彼女が見つかることは決してない。分かっているだろう?」  壊れた人形のように何度も首を縦に振るアンを、サミュエル医師は目を細めて見下ろした。 「しかし無条件で君を帰すというのも、いささか不安が残るな」
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