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村の外れに建つ中学校の裏には「黒の森」と呼ばれる鬱蒼とした針葉樹の森がある。
森の中には昔、小さな処刑場があったといわれている。
今では私有地となり、立ち入り禁止とされた暗く湿った森には、近隣住民たちはあまり近寄ろうとしない。
季節を問わず、周囲にはいつも霧が立ち込めている。
好奇心を抑えきれない子供が時折、大人たちの目を盗んで忍び込むが、出てきた子たちは「普通の森だった」と拍子抜けした顔で語る。
しかし、森の奥にある湖まで足を運んだ子どもたちは皆、口をそろえてこう続けた。
「――――でも、森の奥の湖には“なにか”がいる」
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