Epilogue

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 村はずれの中学校の裏手。人通りの無い農道を、二人の少女が奥へ、奥へと連れ立って進んでゆく。 「お姉ちゃん、こっち」  アンは進入禁止のチェーンをまたぐと、姉を振り返った。足取りの軽い妹とは対照的に、ルカは神妙な顔で立ち止まる。 「ちょっと、ここって立ち入り禁止じゃない。本当に大丈夫なの?」 「平気。管理者の許可はとってあるし」  そう言うと、アンはまごつく姉を置いてどんどん奥へと歩いてゆく。  ルカは少し迷ったが、チェーンをまたいで妹の後を追った。慣れた足取りで獣道を進むアンを、少し後ろからルカがおそるおそるついてゆく。  しばらく歩くと、二人の行く手に古びた小屋が立ちはだかった。  アンは扉を軽くノックし、中に向かって声をかける。 「サミュエル先生」  すると、中から作業服を着た初老の男性が顔を出した。 「やあ、アンディ。待っていたよ」 「これから、森の中を見学してもいいですか?」 「いいよ。気を付けて行ってきなさい。一緒にいるのはお友達かな?」  男性は快く承諾すると、ちらりとルカに視線を移す。あわててルカが片手を挙げると、男性は目を細めて微笑んだ。 「いえ、姉のルカです」  人見知りの激しかった妹が大人の男性に物怖じせず、相手の顔を見て堂々と会話する姿にルカは驚く。
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