Epilogue

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 少し前までのアンは、家族以外の人間とは目を合わせることすら出来ない子だった。今のようにハキハキと話すことなど出来なかった――――ルカは観察するように、妹の後ろ姿をじっと見つめる。 (最近、この子は変わった)  しかしここ数か月でアンは明るく、活発な少女になった。  母親も念願だった特別進学クラスに進んだことで自信がついたのか、以前のように他人に怯えることは無くなり、言いたいことをはっきり主張するようになった。 (それは確かに、良いことなんだろうけど……)  それでも、ルカには妹の変化が唐突すぎるように感じた。何かあったのかと尋ねても、アンは何も答えない。  少し前、妹をいじめていた女の子が失踪したらしいが、それも何か関係があるのだろうか。  そんなことをぼんやりと考えていると、前を歩いていたアンがぴたりと立ち止まる。 「着いたよ」  目の前には古びた箱のような、木製の黒いオブジェが建っていた。  草木の深かった今までの道のりとは対照的に、オブジェから少し離れた一角は雑草すら生えていない。 「……ここが?」 「うん。これ、2枚くらい撮っておいて」  アンがオブジェを指さす。  ルカはカバンからデジタルカメラを取り出し、二、三枚写真を撮った。その横で、アンは小さなノートに何かメモを取っている。
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