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――最後のギフトが届いた。
昨日、私は9つ目のギフトを使った。
彼に残されたものは何だろう。
身体の機能を失えば、心の機能も同様に正常ではなくなる。
彼は昨日、かすれる声で私に一言こういった。
『今まですまなかった。』
この言葉の意味を私は理解出来なかった。
それは彼が言った言葉だと到底信じられないものだったからだ。
今頃になり、やっと自分を振り返ったというのか。
今までしてきた自分の行動の身勝手さを思い知ったというのか。
そんな言葉、今更言われても。
騙されるか。と思うがこれまでの自らの行動に私は自責の念に駆られていた。
だが、今まで彼から受けた数々の仕打ちを思い出せばいくらかその念を打ち消す事ができた。
しかし、そんな自問自答の行為に私はすっかり疲れ果て、一つの決心をする。
最後のギフトを宅配営業所で受け取るとそのまま彼の元へと向かった。
徐々に気持ちは加速し、身体も自然と動く。
院内を疾走する私を見て何人もの看護師に注意をされた。
ついさっきまであんなに葛藤していたというのに。
私の心にもう迷いはなかった。
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