【カタログギフト】

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病室のドアを開けると、彼はまた空を見上げていた。 そして震える指で飛行機雲を宙でなぞっている。 息切れを起こす私にゆっくりと視線を移すと、今にも消え入りそうな声で 『おかえり。』 と言った。 私の目から、ポロリと一粒の涙がこぼれる。 『汗かいてるぞ。』 彼の前で一度も泣いたことなどなかった。そんな彼にはこれが汗に見えるのか。 『あなたに伝えないといけないことがあります。』 私の涙が頬を伝って口へと流れた。 汗と変わらない、塩辛い味覚を感じる。 涙はこんなに辛いものなのだろうか。 あなたにこの辛さを伝えてももう共感はできないのだろうと。 そう思ったら私は全てを伝えなくてはならないという強い義務を感じた。 そうして私は死を覚悟していたこと。ギフトを使用したこと。 これまでのすべてを彼に伝えたのだった。  
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