後期

5/6
前へ
/35ページ
次へ
 モモの母親は、モモの面影を持った素敵な人だった。  モモの十数年先を見るような気がした。  初めて会った僕を歓迎してくれ、家の案内さえしてくれた。  モモの育った家、  モモが遊んだ庭、  すべてがモモに繋がるその家は、僕にとってもとても懐かしい家のような気がした。 「彼女は、今どうしているのでしょう。どこに行けば会えますか。」 と、その質問をするまでの僕は、モモに繋がるすべての思い出に包まれたようで幸福だった。 「八月の下旬から大阪の大学病院に入院しているの。見舞いに行っても、まだ会えないと思うわ。」 「どこが悪いんですか、病名は。」 「悪性の腫瘍が見つかったの、胸に。」  僕は、後頭部を殴られたような気がした。 『この夏に一緒に走ったり、歩いたり、キスだってしたモモがなぜ。』  僕はモモの母さんの唇の動きをスローモーションのように見ながらモモの面影を求めていた。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加