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モモの母親は、モモの面影を持った素敵な人だった。
モモの十数年先を見るような気がした。
初めて会った僕を歓迎してくれ、家の案内さえしてくれた。
モモの育った家、
モモが遊んだ庭、
すべてがモモに繋がるその家は、僕にとってもとても懐かしい家のような気がした。
「彼女は、今どうしているのでしょう。どこに行けば会えますか。」
と、その質問をするまでの僕は、モモに繋がるすべての思い出に包まれたようで幸福だった。
「八月の下旬から大阪の大学病院に入院しているの。見舞いに行っても、まだ会えないと思うわ。」
「どこが悪いんですか、病名は。」
「悪性の腫瘍が見つかったの、胸に。」
僕は、後頭部を殴られたような気がした。
『この夏に一緒に走ったり、歩いたり、キスだってしたモモがなぜ。』
僕はモモの母さんの唇の動きをスローモーションのように見ながらモモの面影を求めていた。
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