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僕は、モモを力一杯抱きしめたい気持ちを抑えて軽く右手をあげる。
モモはそれに微笑みで応える。
ありったけの力を奮って、足を交互に踏み出し、僕はICUを後にした。
警備員室に戻ると、田中さんがお茶を出してくれた。
「話せたかね。」
「はい、ありがとうございました。」
「それはよかった。」
田中さんは、少し寂しげに笑った。
僕は黙ったまま差し出されたお茶を飲んだ。
張り詰めていた気持ちが一瞬で弛んだ。
自分の存在意義と生きる方向を見失なった感じがした。
これからの僕は何をしたらいいのだろう。
どこへ行けばいいのだろう。
気持ちをICUに残した僕は、自分が脱け殻だということを自覚していた。
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