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「もちろんです。」
と、精一杯の気持ちを込めて返事を返した。
そして躰の震えを止められぬまま彼の後をついていった。
ビニールのカーテンの向こうにモモの寝顔があった。
久しぶりにみるモモは透き通る様な白い肌になり、頬も細くなっていたけれど、まぎれもなくモモだった。
『やっと会えたね。』僕は心の中で呟いた。
モモが微笑んだ気がした。
田中さんは、僕を残して警備員室に戻った。
僕が警備員室に戻る約束の時間は午前三時。
後二時間三十七分だ。
それまでにモモが目を覚ましてくれる事を願いながら、彼女との事を思い出していた。
入学後間もない頃、気が進まないまま行った部活で見かけた、トラックを疾走するモモ。
五月病になりかけていた僕を焼肉で癒してくれたモモ。
準急を避け、各駅停車を選んだ小田急線。
そして昨日の事の様な気がする合宿でのキス。
涙でモモが霞んで見えない。
何度も涙を拭ったけれど、直ぐに溢れて見えなくなる。
一言でいいからモモと話がしたい。
僕は祈り続けた、子どもの頃に通った教会の流儀を思い出して。
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