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~*第一章*~*第二章*~
〓第一章〓
いづれの御時にか……
今よりずっと昔のことでございます
仲間たちと並んで
私は空を見ておりました
輝くお天道さんに照らされ
美しく光る仲間たち
そんな仲間たちの下で
誰の目にも触れることのなかった私は
隙間から見える
真っ白な雲や
眩しく輝くお天道さんに
目を細めておりました
そんないつものある日
筋張ってはいるものの
あったかく柔らかい手が私に触れ
私は目を開きました
深い皺が刻まれ 髪も白い
やや高齢の女性が
私をじっと見つめ
ふわりと笑顔を見せてくれました
一緒に並んでいた美しい仲間たちが
僅かに緊張する私を眺めています
仲間たちより劣ると思っていた私を
その方は選んでくださいました
羨ましそうに眺めている仲間たちより
私は劣ると思っていたのに
その方は私を選んでくださいました
*
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〓第二章〓
その方は私をいつも傍に置き
チクリチクリと針を動かしながら
少し前に産まれたばかりの孫娘の横で
色んな話を聞かせてくださいました
お乳の飲みがいいこと
よく眠ること
大きな声で泣くこと
この家にとっては
何十年ぶりかの女の子だと言うことを
それはそれは幸せそうに
話してくださいました
そして時折
チクリチクリと針を動かしながら
産まれてすぐに逝った娘の話を
話してくださいました
注ぎたくても注げなかった全てを
孫娘に注いでやりたいと
話してくださいました
眠る孫娘を見下ろし
本当にいい子だね……と
涙を流し微笑んでおられました
チクリチクリと針を動かし
その日は孫娘の産着を縫われていました
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