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~*第三章*~*第四章*~
〓第三章〓
月日が経つのは早いもので
赤ん坊だった孫娘も 両親を悩ませる
元気すぎる娘に成長しました
しかし祖母であるあの方は
いつも柔らかい笑顔で
彼女を優しく見つめています
毎日のように 祖母の話を聞きたがり
縫い物をする膝の前に座っては
膝をくっつけ目を丸くして
早く早くとせがんでおりました
そんな時は嬉しそうに返事をし
プツンと糸を切ってから
針を片付け横へ押し
どうぞとばかりに膝を開けます
今ではすっかり重くなった孫娘を座らせ
むかし むかし……と
遠い昔の話をしていました
目を輝かせる孫娘を
愛おしそうに見つめておられました
今はもう会えない誰かを
重ねておられたのかもしれません
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〓第四章〓
祖母であるあの方は
忙しい母に代わり
孫娘に様々なことを教えてらっしゃいました
縫い物もその一つで
二人で縁側に座り
チクリチクリと針を動かしては
花嫁姿が見たいわねえ……と
笑っておられました
きまって孫娘は
お嫁になんかいかない……とふくれ
またその様を見て
笑っておられました
そんなある日の朝
あの方は眠るように旅立たれていました
涙を流す孫娘は 私を胸に抱き締め
花嫁姿が見たいと言ったのに……と
声を上げて泣いておられました
声をあげることも
涙を流すこともできない私は
黙って孫娘の胸の中で目を閉じました
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