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~*第五章*~*第六章*~
〓第五章〓
月日は瞬く間に流れましたが
あの方の孫娘は 変わらずのお転婆娘
両親や兄たちが頭を悩ませていても
本人にはどこ吹く風
ただ あの方譲りの裁縫の腕は素晴らしく
それだけは凄いと
皆が口を揃えほめていました
当然だわ
お婆ちゃんが先生だから……
そう言って遠くを見るこの方にとっても
あの方はかけがえのない人だったようです
年頃になった孫娘は
親が決めてきた縁談で
農家へ嫁ぐことになりました
婚礼の前日
彼女は私を手に取り
寂しいから 一緒に来てね……と
私を抱き締め包んでくれました
私はこうして この方と
これからの道を歩くことになったのです
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〓第六章〓
あっという間に時は経ち
時代も大きく変わりました
当初は慣れない仕事に
悪戦苦闘の日々だった孫娘も
持ち前の明るさと逞しさで
すっかり嫁した家の良き嫁に
周囲が彼女を認める頃には
良き母にもなっていました
立派に育った子ども達に囲まれ
忙しくも穏やかな日々を
過ごしておりました
この方は祖母同様に
私を大切にしてくださいました
私は本当に幸せでした……
だから幸せが壊れるなど
夢にも思わなかったのです
けれど時代の波は止められず
それはある日やって来た
血染めの葉書が
長男に届けられたのです
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