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「はじめまして」
僕がそういうと、彼女は答えた。
「ううん。出会ったのはこれで58回目だよ」
初めて見た年上のお姉さんの顔は、何かの勝利を確信したような、力強い笑顔だった。
彼女は一体、僕の何を知っているというのだろうか。
少なくとも、きっと彼女は知っていた。
僕が誰かに助けを求めるように街をさまよっていたこと。
「適当にその辺の人に声をかけてみた」はずなのに、ここまで冷静にされるのだから。
拍子抜けである。
彼女は確かに知っている。
僕のなにかを知っている。
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