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「耳は絶対に出さないで。隠しておいた方がいいわ」
「…耳?」
「耳はメイクとかでごまかせないし、形も結構特徴つかまれやすいの。整形までしたって目鼻口に比べてやる人は少ないし、クリニックを聞き込まれてすぐに足がついたわ」
「整形だなんて…そこまでしていたのか、笑えるな」
「新しい世界で正しい人生を歩むためよ」
正しい…。
確かに、僕には今の自分が間違っているように思う。
そうして否定して生きていかないと、なぜ僕だけ幸せじゃないのかと考えてしまうからだ。
「ニット帽をかぶって。単純にあなたの髪が落ちていてバレた時もあったわ」
僕は言われた通りに、用意されていた黒いニット帽を被る。
「靴もサイズが違うものや、購入日が特定されないような古いものを用意しておいたわ。何足か履き替えながら行動するわよ。足跡には気を付けて」
彼女の指示が止まらない。
57回分の末路をすべてを知っている彼女は、僕が警察に捕まらないように逃げ道を作り続けてきた。
彼女は見てきた。
何度も何度も。
僕が自分の親に復讐する姿を。
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