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彼女は冷静だった。
「その瞬間」も。
「苦しみ出したらよけて。最後の抵抗で引っ掻かれるわ。爪にあなたの皮膚がめりこむ」
「…わかったっ」
僕は興奮状態で、頭がおかしくなりそうだった。
何十年も恨んでいたソレの終わりは、あっけないものだった。
途端に小さく見えた。
なんて物足りない最期だろう。
「死んだわね。偽装工作をしてここを離れるわよ」
彼女は手慣れた手付きで罠をはる。
警察を欺くためだと言う。
複数犯にみせかけたり、死亡時刻の攪乱だったり…。
僕はどこか上の空で。
話を聞いてはいたけれど、内容を理解するほどは聞いていなかった。
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