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逃走中。
彼女の運転する車は雑木林で止まる。
「車を乗りかえるわよ」
乗り捨てて、用意されていた車種の違う車へと乗り込む。
「逃走ルートは何十回も変更した。今回こそ絶対に捕まらない。
できるだけ遠くへ行って、時効になるまで逃げ切りましょう」
僕は震える手をぎゅっと握りながら、不安に襲われる。
「もしそれでも…うまくいかなかったら…?」
「もしまだ欠点があって捕まったら、また時間を巻き戻せばいい。私はまたあなたに会いに行くから」
ハンドルを握っていた左手がスッと伸びてきて、僕の手に重なる。
僕を助けてくれる冷たい手。
そう。
今、現実にこんなことが起きているんだ。
信じないわけにはいかない。
彼女には、時間を巻き戻す力がある。
僕を勝利まで導いてくれる人。
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