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母が亡くなったのは日野の悪夢から4年たった夏の日だった
お姉ちゃんの怜奈(れいな)は、16歳
お兄ちゃんの広臣(ひろおみ)は、11歳
私は、4歳になった
怜奈ねぇのアルバイトでは学費や生活費は当然補えないので、祖父母から仕送りをしてもらっていた
祖父母はお金を出すだけで面倒なことには巻き込まれたくない
それ以上のことは踏み込んでこなかった
しかし3人そんなことは気にしなかった。昔から仲が良く、怜奈と広臣はこころのことを可愛がり、こころは怜奈と広臣のことを、広臣も怜奈のことを慕っていた
数年後の怜奈が22歳の時
日野の悪夢から10年経っていた
こころが10歳、広臣は17歳、怜奈は就職活動中
法学部で公務員志望だったので、法務省への就職を希望していた。そして怜奈は無事に国家公務員試験に合格した。希望通りの配属にならないことは言われていたが、配属された部署はあまりにも酷かった
こころ「...メディア良化委員会?」
怜奈「うん...」
広臣「姉ちゃん検閲やるの?」
2人は怒った。父親が図書館員でしかも日野の悪夢で亡くなっているのに、それはあり得ないとしか考えられなかった
広臣「父さんのこと忘れた訳じゃないよね?」
怜奈「忘れる訳ないじゃない!検閲なんて許せないし、合格を辞退したいくらいよ」
こころ「じゃあ何で?」
怜奈「当時亡くなったお父さん達との関わりが分かるかもしれない。"敵"の良化隊にいれば得ることもきっとある」
その言葉に2人は言い返せなかった。いつも大人で先のことをちゃんと考えている
怜奈「こころと臣(広臣のことを臣って呼んでる)には申し訳ないと思ってる、お父さんにもお母さんにも。けど分かって」
こころ「うん...分かった。お姉ちゃん頑張って」
怜奈「ありがと」
怜奈は悲しそうに笑った。怜奈にとって良化隊員になることはどれだけ苦痛だったのか。亡くなったお父さんやお母さんを裏切る形になるからだ。しかしこころと広臣にとって怜奈は憧れの存在だったーー当時までは
最初は検閲に抵抗があったのが、淡々とこなすようになり更にメディア良化法に賛同する考えまで持つようになった
そんな姉の姿を見た2人はショックだった
どうしてそんなことができるのか、どうして裏切ったのか。しかし姉と一緒に住んでいるのでそんなことは言えず、こころが中学進学、広臣が大学進学と共に2人は家を出ていった
そんな時だった
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