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いつもの騒がしい食堂のテレビで流れた突然の訃報だった
『野辺山財閥の元会長、野辺山宗八さんがすい臓ガンのため入院先の病院で亡くなりました。野辺山氏が運営していた小田原の情報歴史図書館は近く閉鎖されることになります』
玄田「故野辺山氏の遺言により情報歴史図書館に所蔵されている全資料を関東図書隊が引き取ることになった」
玄田隊長の発表にタスクフォースの会議室は騒然となった。郁ちゃんはただ1人完全に乗り遅れていた
堂上「メディア良化法に関する報道資料が保管されている小田原にある図書館だ」
絶妙なタイミングでのフォローは郁ちゃんの知識レベルを完全に読んでいる
こころ「その中には良化法成立当時の不正な証拠も残されてる」
笠原「何でそんなものが手付かずで残ってるの?」
こころ「財団法人化された私立図書館だからだよ。良化隊も私的財産までには手を出せなかった」
私の丁寧な説明にここまでくれば郁ちゃんでも理解できた
玄田「告別式が閉館日当日、すなわち資料の受け渡し日だ。奴らは全総力を挙げて全てを奪いに来るはずだ。これはもはや検閲ではない、かつてない規模の戦闘が予測される。我々タスクフォースも全総力を挙げて良化隊の妨害を阻止する!」
そして次の玄田隊長の口からは予想もしてなかった言葉が出てきた
玄田「尚、堂上班の笠原は本隊とは別に告別式に参列する稲嶺指令の警護に当たるように」
郁ちゃんだけではなく、私も手塚くんも唖然とした。質問する機会も無く、説明は続けられた
会議が終わると郁ちゃんは真っ先に堂上教官に食い下がった
笠原「堂上教官、どうして私だけ外されるんですか」
堂上「要人警護は本来特殊部隊の任務だ。うちから誰も出さない訳にはいかないだろ」
小牧「介助役は女性の方がスマートだし、いざという時に護衛できるからね。それに要人警護はなかなか無い機会だから経験してもらいたいんだ」
小牧教官のフォローは却って僻みが煽られた。要人警護と言っても形式的なものであるのは明らかだ
笠原「経験が無いのは手塚くんも一緒です。それに女性の方がスマートなら、こころも適任です。なのにそれがどうして私1人だけなんですか!」
堂上「お前が戦力にならないからだ!何か文句は」
ほぼ反射的に堂上教官は答えた。郁ちゃんは容易く予想できた答えだったが、実際に言われると辛かった
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