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辻川さん潤んだ瞳で僕を見上げてくる。餌をお預けにされた子犬が、耳を元気なく倒してこちらの様子を伺っているイメージ。
まぁ、そんなことだろうと思っていたけどね。
ひっそりと落胆していることは表情に出さず、僕は余裕のある笑みを浮かべた。
「うん。大丈夫だよ。ただ、僕も部屋で友達と呑んでるときはうるさくするかもだけど、そのときはお互い様ってことで」
「本当ですか!? 全然大丈夫です! ありがとうございます!」
今にも飛び上がってしまいそうなほど喜んでいる辻川さんを見ていると、僕も嬉しくなる。満面の笑み。
もしも頼んできたのが、40歳くらいの冴えないおっさんやカッコつけたロン毛の兄ちゃんだったら、僕は即断っていただろう。男なんてそんなもんだ。
「これから、他の人達にも聞いて回るの?」
「はい! 皆さん許可をくださると良いのですが……。き、厳しそうな方とかいませんよね?」
「うーん、どうだろう。住んでる人全員について知ってるわけじゃないけど、愛想の良い人が多いと思うよ」
すれ違ったときに挨拶を交わす程度の仲だけど、その一瞬で分かることもある。
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