3回ノックと君の音

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           ♪  心が揺れる。外耳道から脳までを貫くような衝撃が、身を焦がすような熱を全身に拡散する。  刻みつけられていた。  抉られていた。  もしかすると、これから一生この記憶を捨て去ることはできないのかもしれないと直感するほどの、圧倒的なエネルギー。  アコースティックギターのしんみりとした音色に、外見からは予想もつかないような凛とした歌声。  弾き語りというやつだろうか。聴いていると泣きたくなるような曲調なのに、根底には人の感情に訴えかける力強さがある。  流行の曲は一通り聴いているけど、どの曲もこんなにも胸に響くことはなかった。  それは、半ば無意識の行動だった。音が止むと、ライブに行ったときのような興奮を覚えながら部屋を飛び出し、隣の部屋のドアを拍手のように断続的にノックする。  こんな夜遅くに迷惑じゃないかとか、チャイムを鳴らせば良いとか、そんな常識的な思考は彼女の演奏にぶっ壊されていた。  ノックの回数なんて覚えていない。ただ今は、彼女の歌への賞賛を思いっきり伝えたかった。  僕が騒々しいノックをした後、すぐさま辻川さんが姿を現す。「辻川さん! 今の演奏すごく良かったよ!」と言おうと僕が口を開いた瞬間だった。
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