3回ノックと君の音

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 夕飯を買いに行こうと身を起こすと、自分がスーツを着たまま寝転んでいたことに気付いた。  Yシャツにしわが寄っていて、あちこちに折り目がついている。明日もそのまま着ようと思っていたのに、これじゃあアイロンをかけないといけない。  面倒だなぁと嘆く反面、まぁ別にいいやと思う自分がいる。楽観じゃなくて、怠惰。  黒ずんだシミの散見する畳に無気力に投げ出されていたリクルートバッグをのろのろと跨いで、玄関へと向かった。  徒歩数分のところにコンビニがある。その事実は僕が進学するにあたって4年間の住居をここに決めた理由の1つだった。  破格の家賃で、大学に近く、徒歩で行けるところにスーパーやコンビニがある物件というのはそうそうあるものでもない。  おにぎりを数個と、菓子パンにお茶。弁当は割高だから安いものをと思うのだけど、いくつも買っているうちにいつも支払いは弁当1個分の値段を超えてしまう。  買ったものをカゴに乱雑に入れて、レジ前にできている列に並ぶ。  バイトらしき店員がやる気なさそうにバーコードをスキャンしているのを見て、前に並ぶ40代くらいのおじさんはイライラしているようだった。僕は別に気にしない。イラつくだけの気力もない。
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