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「こんな道の真ん中で立ち止まってたら、そりゃあぶつかられるってもんよね」
美しい少女は、わたしと同じ中学の制服を着ていた。背丈もちょうど、わたしと同じぐらい。こんな可愛い子と似たような格好をして隣り合って立っていると思うだけで、わたしはなぜかとても恥ずかしくなって顔がどんどん赤くなっていくのが自分でもわかった。
「でもよかった。あなたも同じ学校の生徒よね? 悪いんだけど、わたしも一緒に連れて行ってくれないかしら? 今日が登校初日なんだけれど、道が全くわからなくなってしまって……」
「べ、べべべ、別に、い、いいです、けど……」
まただ。どうしても、どもってしまう。
くそう、このもどかしい口め。この口がもっと滑らかに動いてさえくれれば、今頃はもっと楽しい人生を送れてたはず……なのに……
「そう? やった! 助かるわ! 本当にありがとう!」
少女は、わたしの妙な言葉遣いなんて少しも気にならないかのように、とびきりの笑顔で、右手を差し出してきた。
「わたし、尾上ユミ。ユミ、でいいわよ。あなた、お名前は?」
「お、おお、尾上さん……?」
「えぇ、そうだけど……?」
なんてことだ。わたしは、その「尾上」という名字に心当たりがあった。つい最近、我が家の隣の空き家に越してきた家族の名字が、確かーー
「あなたは?」
「わた……わたしは、桜川ーー桜川、エリカ、です……」
「ん? 桜川……? それってひょっとして?」
彼女ーーユミの方もわたしの名字に心当たりがあったようだ。
急に顔を輝かせて、中途半端に差し出されていたわたしの右手を自分からつかんでくる。そして、両手でそれを上下に振りながら、うれしそうに言った。
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