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そういうことが積み重なっていくと、少しずつユミに対する恐れめいたものがクラスメイトたちの間に漂うようになった。
必然的に、ユミと一緒にいることの多いわたしに対するちょっかいも少なくなっていく。
やがて、直接的ないじめ行為はほぼなくなった。
けれどその代わりに、わたしとユミは中学校内でどんどん孤立していった。
ユミはきっと、わたしなんかに関わらなければ、もっと楽しい中学校生活が送れていたはずだ。彼女みたいに可愛くて、頭もよく、嫌みのない性格をしていたら、絶対に誰からも好かれて、学校一の人気者になっていたはずだ。
それを思うと、わたしはユミに対してとても申し訳ない気持ちになった。
いつかそのことを彼女に謝らなければと思っているうちに、私たちはいつの間にか中学三年になり、受験も終えてしまっていた。
「来月から高校生だね。なんだか、信じられない」
ユミと二人、冷たい北風の吹く並木道をのんびりと下校しながら、わたしは言った。
「ええ。高校に行っても、エリカといっしょにいられるのが、とても嬉しいわ」
……そう。ユミとわたしは、たまたま同じ公立高校への入学が決まっていたのだ。
「ユミ……」
わたしは、何気なくこういうことを言ってくれるユミのことが、たまらなく好きだ。愛おしい、と表現しても大げさではないぐらいに。
けれど、その気持ちはこれまでずっと押し殺し、誰にも伝わることのないように気をつけてきた。きっとこれから先も、口に出すことはないだろう。これ以上、ユミの輝かしい人生に、わたしという名の影を落としてはいけない。
ユミは、もっと素晴らしい、幸せに満ちた人生を歩むべき人間だ。
「ユミ、あのね……。わたし、高校に入ったら、運動部に入ろうと思うの」
わたしは、このところずっと考え続けていた台詞の、最初の一言を発した。
「へえ! ……それはまた、思い切ったことを考えてるのね。エリカ、あなた、体育の成績いくつだっけ?」
「か、からかわないでよ! わたし、本気なんだから! 高校に入ったら、運動部に入って、この究極的な運動音痴を克服するんだわ!」
「はいはい。わかったから。……で? なんの部活に入るの?」
「そ、それはまだ……決めてない、けど」
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