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「あはは、なによそれ? まあいいわ。それじゃ、テニス部にしましょうよ! ラケットならわたし、いくつも持ってるし、テニスならいくらでも教えてあげられるから」
「ユミ……」
「あ、でも朝練とかきびしかったらパスね。わたし、朝弱いのエリカも知ってるでしょ? できれば朝練のない部活にしてちょうだい」
「あ、あのね、ユミ……」
わたしは、立ち止まって、先を歩く親友の背中に声をかけた。その声が少し震えているのは、生まれつきのあがり症とはなんの関係もない。
「ぶ、部活には、わたし、ひ、一人で入ろうと、思ってるの」
「え?」
心底わたしの言葉が理解できないのか、振り返ったユミの眉が大きくひそめられている。端正なルックスが台無しだ。
「ど、どういうこと? これまでわたしたち、何をするのも一緒だったじゃない?」
「だ、だから……もうそういうの、やめにしましょうって、い、言っているの……」
「そういうの? ……そういうのって、なに?」
ユミの顔から、みるみる温度が消えていく。これまで、わたしには一度だって向けられたことのない冷たい表情だ。
怖い。これまでずっと、命綱のように頼りにしてきた親友を……いや、それ以上の存在を失ってしまいそうな気がして……とても怖い。
けれど、だめだ。ここで引いてしまっては。
誰よりも、何よりも……ユミのために。
わたしは、ぶるぶると震えだした両手を握りしめて、精一杯の声を出した。
「毎日毎日、いつも、な、なにをするのもずっといっしょって……や、やっぱりちょっとおか、おかしいよっ……! ず、ずっと、いつか言おうって、思ってたんだ、けど……!」
ちがう。ちがうんだ。わたしはこんなこと、本当は彼女に言いたくなんてない。……けれど、他にどんな言葉を口にしたら、ユミをわたしから遠ざけられるのかわからない。
わからないままに、わたしはどんどん鋭利な言葉を吐き出していく。
まるでその言葉が物理的な鋭さをもっていて、吐き出す度に自分の口内をカミソリの刃みたいにギザギザに傷つけていくような気がした。
「た、たまには、わたしだって一人になりたいんだよっ……! ユ、ユミのお守りはも、もうたくさんなんだよっ……!」
「……エリカ……!?」
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