試し書き

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 つまらなかった。毎日が。何もかもが。  成り行きで受験して合格した大学での生活は三年目に差し掛かろうとしている。勿論成績は悪くない。生活も充実していた。付き合っている年上の彼氏だっている。それでも、何かが物足りない。そんな気持ちだった。  今日は私の誕生日だった。色んな人からお祝いの言葉を貰った。しかし私は自分で自分の誕生日を他人に教える方ではない。彼氏の仕業だ。彼は彼女である私の誕生日を言い触らしている。帰ったら、盛大に祝われるに違いない。  そろそろ帰ろうかと身支度をしていた矢先、バイブレーションの無機質な振動が私の鞄を震わせた。新着メールが一件。彼からだ。今夜駅前のレストランで食事をしよう、という内容だった。ああ、やっぱり。あんな店を予約してまで、誕生日を祝ってくれる気らしい。そのくらい、私は愛されている。 *** 「ハッピーバースデー!!」  約束通りレストランへ行けば、吃驚するほど人が集まっていた。見知った顔もあったが、知らない人が殆んどだ。ざっと数えて二十人以上。おそらく皆、彼の友達だ。友達の彼女の、しかも顔も知らぬ女の誕生日を祝いに来るなんて、とんだお人好したちだ。それも、彼の人徳なのだろう。 「美冬」 「どうしたの、これ。貸しきり?」 「ああ。どう? 驚いたろ? 誕生日おめでとう」 「ふふっ……ありがとう。驚くに決まってるじゃない、こんな盛大なお祝い……こんなにお金かけて祝ってくれなくても」  申し訳ないじゃない、そう言おうと思った。 「費用はそんなにかけてないよ。誕生日に金のことを考えるなんて相変わらずムードがないな」  ムードがないなんて、こんなパーティーを用意していた彼にだけは言われたくない。私は心の中で少し悪態をついた。
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