第4話 災いを呼ぶ力

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 ※  戦いの始まりは無音だった。  リラさんの耳がぴくりと動く。 「始まった」 「え?」  俺の耳には何も聞こえてこない。 「魔矢の音、人間には聞こえない音。でも私たち、聞こえる」  俺の頭上にいた水色スライムが激しく飛び跳ね出す。  ちょっとうざかったので、俺は頭上の水色スライムを手で捕まえた。  水色スライムは俺の手をすり抜けるようにして脱出し、今度は俺の体のあちこちを飛び跳ね出した。  まるでハエ取りでもするかのように、俺はイライラしながら、まとわりつく水色スライムを手で捕まえるのに必死だった。 (──ってかなんだよコイツ、なんでこんなに俺に懐いてんだ?) 「スライム懐く。良いこと。心に闇のある人間、スライム懐かない」 「そんなこと言われたら無下に払えなくなる」  結局、水色スライムは俺の頭上を定位置と決め込んだのか、最後は身を隠すようにしてそこに収まった。 「もういい。好きにしろよ」  俺は頭上の水色スライムをそのままにした。  リラさんが声を落として俺に言う。 「やはり奴ら反撃してこない。お前出てくるの、待ってる」 「このままここに隠れていたらダメなのか?」 「奴ら、そこまで待たない。お前が出てくる方法、きっと考えてる」  それを証明するかのようにどこかで悲鳴が聞こえてきた。  一人だけじゃない、何人もだ。  次いで荒々しく駆け回る足音、緊迫した叫び声、誰かを呼ぶ声、子供の泣き声、金物を打つ音。  雷が轟くような大きな音がした。  家の中が異様に蒸すような暑さに包まれる。  風に漂い、焼け焦げた臭いが鼻をつく。
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