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リラさんが俺に言う。
「お前ここで待て。私、見てくる」
俺は無言で頷いた。
リラさんが俺を置いて家を出て行く。
──が、すぐに引き返してきた。
「え、なに、どうし──?」
慌てて俺の腕を掴んで引っ張り、その場から立ち上がらせる。
「これ以上隠れる無理! あちこち火の魔法、村燃えている! この家燃えたら落ちる! ここ危険、今逃げる!」
俺はリラさんに引っ張られるようにしてすぐに家から連れ出された。
そして家を出て、すぐ。
俺が目にしたのは辺り一面、炎に包まれた戦場だった。
地上にいたエルフたちは散り散りになっており、黒騎士に向けて魔を織り込んだ矢を放っている。
初めて目にする恐怖。
俺の足が竦んで震えた。
赤く燃えた家が次々と俺の目の前で大きな音をたてながら木から崩落していく。
俺が聞いた雷のような音の正体はこれだったのか。
音の正体がわかればわかるほど、俺の中の恐怖がより一層大きくなっていった。
二本、三本と家を繋いでいた縄梯子が切れていく。
誘い込まれるかのように脱出路がだんだんと限られてくる。
ふと、一人の傷を負った青年エルフが俺たちの前に現れた。
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