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ふう、と息をはいた。お皿の上のメンチカツだって温かいうちに食べて欲しいに決まってるのに。
何時になったら一人で食べようか。そんなことをぼんやり考えていた。
その時、家の固定電話の呼び出し音が鳴り響いた。
「○○警察署の前田と申しますが、いくつか確認させていただきたいことがあってお電話いたしました」
声は若い男だった。はきはきとして、聞いているこちらも背筋の伸びるような声だった。
「はあ」
最寄りの警察署から電話が来た、という事実に私は緊張していた。
一瞬の間に嫌な予感がいくつも脳裏を通り過ぎる。
夫が交通事故でも起こしたのだろうか。
あるいは事件に巻き込まれた、とか。
夫でなければ実家の親、もしくは舅、姑だろうか。
それとも近所から何かおかしな苦情でも入ったのだろうか。
あれこれと不安の種を掘り起こしていると、電話の声は少しトーンをおとして言った。
「説明が少し長くなりますが、落ち着いて聴いてくださいね」
彼が説明したのは、最近この近所を荒らしていた空き巣がつかまった、という話なのだ。ところが‥‥
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