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「空き巣、というと窃盗になりますが、今回捕まった犯人はちょっと違うんですよね。我々は『物色』、と呼んでいますが留守宅になんらかの方法で入りこみ、物はとらずにあれこれ見るだけ、という犯罪があるんです」
「物色、ですか」
「おそらく、そちらのお宅も被害に遭われているはずなんですが‥‥お心当たりはありますか?」
私はしばらく考えこんだ。前田、と名乗った警官は続けた。
「たとえば、出かける前と後で少し物の位置が違っていたり、とか。窓や玄関の鍵に細工された後があった、とか、そういうことは今までなかったですか?」
「いえ‥‥全然気がつかなくて‥‥」
「そうですか」
何か少しがっかりさせてしまったような、微妙な罪悪感を感じた。
「あの、物色、というのはよくあるんですか?」
「だいたい空き巣の下調べとして行われることが多いです。金目のものをどこに保管しているか、パソコンなどの家電は持ち出せそうか。そんなことを何度か侵入して調べておくんです。そうすると、いざ実行の時に手際よくやれる、というわけです」
「じゃ‥‥」
私は思わず手を口にあてた。我が家は空き巣に狙われていた、ということか。
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