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「‥‥それってまさか‥‥」
「もちろん‥‥そういう映像ですよ。おそらくご夫婦の寝室のエアコンの内部にカメラを仕掛けていたんだと思います。犯人はそういった場面だけを編集して自分のパソコンに残していました」
口に手をあてて、悲鳴のような声をなんとか抑えた。
「しかも、それを‥‥ご主人やこちらの職員立ち会いで見ていただかなくてはならなくなるので‥‥女性としては、とてもいたたまれないと思うんですね」
「それにその‥‥なんとも言いにくいんですが、奥さんご主人に内緒にされていることがありますよね」
「え‥‥」
あわてて寝室での出来事を記憶の中からさらった。そして、とんでもないことに思い当たった。
足が震えてくる。
そんなはずはない。あれは一晩だけの過ちだ。それをちょうど盗撮していたなんていう偶然があるだろうか。
「いや、でも、そんなわけないです。あの人のことは‥‥」
必死で虚勢を張る私に、若い男性の声は無情に響いた。
「すみません。やっぱあれはまずいんですよね、ご主人に見ていただくのは」
重い沈黙が降りた。
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