1、みのりの場合

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   他人が欲しいと思っているものが輝いて見えるのは、何故だろう。昔からそうだ。友達が欲しがっていたおもちゃ。ゲーム機。そして彼女でさえも、手に入れないと気が済まない。我ながら意地汚い性格だと思う。有紀美もそうだった。有紀美も最初は、史人が狙っていた子だ。それを強奪し現在彼女になったのだが、史人はしょうがないな、という顔をしただけだった。顔には出さなかったが、きっと心の中では俺のことが憎くて堪らなかったのだろうな、と予想する。史人は昔から俺に甘いのだ。  「みのり、すごい楽しかったって!史人くんによろしく伝えといて!」  就寝時間が近づきベッドに寝転がっていると、有紀美からメッセージが届いた。だがそれを素直に伝えるほど、俺はお人好しではない。  「よかったな!紹介した甲斐があったよ」  肯定も否定もしない返事をして目を閉じると、二人が楽しそうに街の中を歩いている光景が目に浮かんだ。  
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