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みのりちゃんとは、あの後何回かデートを重ねた。平日に会える日は食事に行って、休日はデートスポットに足を運んだ。動物園や美術館、イルミネーションも行った。それでも俺たちは、手をつなぐことがなかった。単純に俺がチキンなのだ。
「いつ告白しようか―」
確信が欲しかった。こんなに何回も二人で会ってくれるのだから、嫌われてはいないと思うのだが、それだけでは足りなかった。
「なぁ、孝宏は彼女にどうやって告白した?」
「は?」
ある平日の夜、孝宏に呼ばれて俺は珍しく居酒屋にいた。おしゃれでも何でもない、駅前にあるチェーンの居酒屋だ。あまり酒が好きではないから、飲み会以外で行くことはあまりないのだが、孝宏がどうしても会社の愚痴を言いたいから来い、と言うので付き合うことにしたのだ。
「なに史人、好きな奴いるの?」
「…うん。」
「史人もついに童貞卒業かー!?」
「ばっ、ばか、大きい声で言うなよ!」
「いいじゃんか、ホントのことだし。告白の仕方だろ?そうだな…」
孝宏が腕組みをして考えている。俺はグラスを置いて、じっとその返事を待った。
「女はサプライズが好きだぞ。あとシチュエーションも大事だな。今からなら、クリスマスにどっかのでっかいツリーの前でプレゼント渡しつつ告白すればいいんでないの?」
思ったよりまともな返答に、俺は少し拍子抜けしてしまった。
「なにポカンとしてんだよ。俺だってちゃんと答えるさ、親友が悩んでるんだもの」
「孝宏…」
なんだかジーンとしてきた。やはり持つべきものは友達か。
「最高のクリスマスになるか、最低のクリスマスになるかはお前次第ってことだな。頑張れよ!んで結果待ってる。というわけで、会計は史人持ちな!」
「えぇぇぇ!!」
前言撤回。俺の感動を返せ。
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