1、みのりの場合

14/21
前へ
/21ページ
次へ
   ついにその日がやってきた。  12月23日。今年はクリスマスが平日のため、祝日の23日にクリスマスデートをすることになった。  今日は告白すると決めている。流石にもう大丈夫だろう。プレゼントは持ってきたし、ネットであれこれ検索し、デートプランも念入りに考えた。きっと喜んでくれるはずだ。  「おまたせー!」  待ち合わせ場所に小走りで現れたみのりを見て、俺は寒さで固まった顔の筋肉を緩めた。今日も俺好みの服を着ている。まったく、俺のツボを幾つ突けば気が済むのだろう。  「ごめんね、寒かった?」  「全然!今来たとこだし」  外で待っていた俺を気遣ってくれる。こういう所が好きなのだ。  「じゃ、行こっか」  手を繋ぎたい衝動を必死で抑える。まだだ、もう少し待つんだ。  「今日はどうしようか?」  「俺プラン考えてあるんだ」  「プラン?」  「水族館でプロジェクションマッピングやってるとこあるの知ってる?マンタのお腹とかに映るんだ」  「テレビで見た!でも隣の県だよ?」  遠くない?と言いたげなみのりの言葉を遮り、俺は続ける。  「大丈夫、車あるから。移動も寒くないよ」  「まぁ確かにね…」  みのりは思ったより遠くに行くことに戸惑っているようだ。確かに今までは市内でデートをしてきたから、今回も市内でデートをすると思うのが普通だろう。しかし今日はクリスマスデート。いつもとは気合の入り方が違う。  「せっかく史人くんがプラン考えてくれたし、今日は任せちゃおうかな!」  先程の戸惑った顔から一変、全て俺に任せると言った笑顔は、今まで見た笑顔の中で一番輝いて見えた。  
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加