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それは、突然のことだった。
『今週の土曜日空いてる?』
柄にもなく、ドキッとした。スマートフォンに表示されたそのメッセージを見た直後から、わたしはしばらく硬直してしまった。
『空いてるよ!』
そう送信できたのは、一時間後のことだった。こういうとき、一人暮らしでよかったと心の底から思った。一時間の間にわたしは奇声を発し、奇妙な動きをしながら何度もスマートフォンに向かって「二言はないな!?」と問いかけた。何度も空いていることを伝える文章を書き直した。結局、可愛げも飾りっけもないものになってしまったのだが。
『よかったー!見たい映画が公開されるから、一緒にどうかなって思って!』
映画!初デートは映画!ベタだけどイイ!
まだ火曜日だというのに、わたしはクローゼットを開け、鼻歌混じりに土曜日に着ていく洋服をコーディネートし始めた。
「ほんとに恋してるな…」
静かな部屋の中でぽつんと呟いた声が、やけに大きく聞こえた。
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