1、みのりの場合

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     土曜日。  わたしは散々悩んだ挙句、無難なワンピースに無難なダッフルコートを着て集合場所である駅に到着した。とりあえず相手の趣味が分からない現段階では、個性を出すよりもオーソドックスなもので様子を見ようと考えたのだが、我ながらチキンだと思う。  12時に駅の北口にあるコンビニの前に集合。何度もメッセージを見直し、間違いがないか確認した。大丈夫、間違いない。  只今の時刻は11時40分。外にずっといると少々冷える気温なので、コンビニの中で待機することにした。  どの人が「史人くん」なのだろう。わたしも相手も、お互いの顔を知らない。趣味が合い、話が盛り上がったからこそ、外見は重要に思えた。面食いではない(と思っている)が、きっとお互いに期待値が高まっているに違いない。  雑誌コーナーの前に立ち、雑誌を立ち読みする振りをしながら外を見る。あの人かな。いや、あの人かな。そうやって待つ時間はすごく楽しかった。  ポケットに入っているスマートフォンが震えた。メッセージが届いたようだ。  『ついたよ!どこにいる?』  ついにそのときが来た。一気に緊張が走る。今見えているこの中に、「史人くん」がいる。  『わたしもついたよ!』  送信しようとしたとき、着信があった。「史人くん」とある。  「も、もしもし!」  慌てて電話に出ると、心地よい声が聞こえてきた。  「もしもし、みのりちゃん?ついたけど、どこにいる?」  とても優しい、穏やかな声だった。ここから見える電話をしている人は、あの人しかいない。今はまだ後ろ姿で、顔を見ることはできないけれど。
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