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「コンビニの中にいるよ。あのジャケット着てる人がそうかな?」
そう言うと、その人は少し下を向いて自分の着ているものを確認したように見えた。
「うん、ジャケット。じゃあみのりちゃんからは俺が見えてるんだ」
その人が振り返る。振り向いた場所からここまで、距離にして15mといったところだろうか。こんなに景色をスローに感じたことはない。まるでドラマのワンシーンのように、キラキラとしたBGMと効果音を纏って、史人くんはこちらに向かって歩いてきている。
夢にまで見た史人くんが、徐々に近づいてくる。あと10m…あと5m…。朧げだった存在が、ゆっくりと、だがはっきりと形になっていく。
「お待たせ」
コンビニには入らず、ガラス越しにそう言ったように感じた。
この人が「史人くん」…。
散々期待したからだろうか。夢にまで見てしまったからだろうか。やはり、自分の中でハードルが上がっていたことを実感した。
こんなとき、ドラマではものすごく爽やかなイケメンが現れるのが常であるが、これは現実。そう甘くはないのだ。
はっきり言おう。第一印象は、ものすごく普通。可もなく不可もなくとはこの人のためにある言葉だと思った。自分のことを棚に上げて敢えて言おう。そこら辺にいるタイプの人間だと。
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