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メッセージからひしひしと感じていたのだが、史人くんはわたしと同じなのだ。お人好しで周りに尽くした結果、自分が損をする。恋愛も仕事も同様だ。典型的な「いい人」タイプ。そこから何か発展することはないし、この苦労は同じタイプの人しか分からない。有紀美はきっと一樹くんから史人くんの話を聞いているうちに、わたしの顔が出てきたのだろう。だから紹介してくれたのだ。
映画を無事見終わり、陽が傾き始めた頃には、わたしたちはすっかり意気投合していた。まるで何年も交流がある友人のように。
「ねぇ、色々話して喉渇かない?俺が好きな喫茶店がすぐ近くにあるんだけど、行かない?」
「行く!行きつけなの?」
「行きつけ…といえば行きつけなのかな」
「何それ~?」
「中学の頃の担任の先生がやってる喫茶店なんだ。だから行きやすくて、月一くらいで行くかなぁ」
「そういうのいいなぁ。わたしもお気に入りのカフェはあるけど、チェーンだし行きつけとは言い難いもん」
「チェーンでもお気に入りでよく行くなら行きつけでいいんじゃないかなぁ。ほら、あそこの角の喫茶店だよ」
あそこの角、と言われてもピンとこないくらいこぢんまりとしたその店には、『望月珈琲店』と控えめに書かれていた。
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