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「研究員は直ちにラボラトリイから非難しろ!」
お禿げ研究所の警報ベルがけたたましく鳴り響き、施設の至る所をランプで赤く染める。
感染すると頭のてっぺんだけが綺麗に剥げるペイジウィルスが、真空管の破裂に伴って研究所にばらまかれたのだ。
研究所では禿げハザードに備えて緊急非難出来るスペースは設けられているが地上へ抜ける全ての出口は完全に閉鎖されてしまう。
「天辺だけ禿げるのは厭だあああっ!」
「いっその事ツルッパにしてくれえええ」
「ハート型の禿げにしてええ」
研究員達は研究室から好き勝手に叫びながら、研究室の出口へ凄まじい勢いで駆け込み、扉をガシャガシャと叩き付ける。
「貴方達。禿げたいの? 早く非難所に戻りなさい!」
ペイジウィルスの開発者ペイジー博士は忠告するが、時既に遅かった。
「か、か、か、髪があああ」
男性研究員に早くも感染したようだ。旋毛の中央からずるりずるりと髪が抜けていく。然し。余程頭皮との相性が良かったのかペイジウィルスは活性化を始めた。
天辺禿げの円は徐々に広がり、河童の皿のような頭になると、揉み上げだけ残した。そう思ったのも束の間で遂に揉み上げまで抜けてしまった。
「うわあああ! 禿げた! 禿げた!助けてくれえええ!」
「諦めないで、頭皮と戦いなさい!」
ペイジーはそう言うが、男性研究員は自分の禿げにとうとう発狂した。
「髪を、髪をくれえええ」
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