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気付けば車は家の近くまで来ていた。
「停めてください。すぐそこだから…ここで降ります。」
「熱は大丈夫?家まで送っていくよ。」
「ここから歩いても2、3分だから一人で大丈夫。
熱はさがってきたみたい。」
高村くんが私の額に手を当てる。
その手の温もりがきっと触れられる最後だと思うと、涙が込み上げそうになるのを必死でこらえた。
「うん、熱は無いね。」
車が止まり、高村くんが先に降りて、その後に続いた。
車の前で向き合い、出来る限りの笑顔を向けた。
「ごめんな。
大人になったら、夕貴に会いに来ていい?」
「うん。
でも約束はしないで。
高村くんには自由に羽ばたいてほしい。
重荷になるのは嫌だから…。」
「重荷なんかじゃないよ。」
「ありがとう、元気でね。」
「…夕貴。」
名残惜しそうな彼にすがり付きたくなる。ずっと一緒にいたい。彼の温もりにもう一度触れたい。
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