第1章

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気付けば車は家の近くまで来ていた。 「停めてください。すぐそこだから…ここで降ります。」 「熱は大丈夫?家まで送っていくよ。」 「ここから歩いても2、3分だから一人で大丈夫。 熱はさがってきたみたい。」 高村くんが私の額に手を当てる。 その手の温もりがきっと触れられる最後だと思うと、涙が込み上げそうになるのを必死でこらえた。 「うん、熱は無いね。」 車が止まり、高村くんが先に降りて、その後に続いた。 車の前で向き合い、出来る限りの笑顔を向けた。 「ごめんな。 大人になったら、夕貴に会いに来ていい?」 「うん。 でも約束はしないで。 高村くんには自由に羽ばたいてほしい。 重荷になるのは嫌だから…。」 「重荷なんかじゃないよ。」 「ありがとう、元気でね。」 「…夕貴。」 名残惜しそうな彼にすがり付きたくなる。ずっと一緒にいたい。彼の温もりにもう一度触れたい。
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