第1章

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先生が鞄を取りに行くと言って出ていって、シーンと静まり返った保健室… ベッドの上で思い浮かべるのは高村くんの顔。 緑のパーカーにジャージ姿 チューリップハットとロングヘアー 伊達眼鏡に太い眉にマスク… 別人のように変身していても、長身で彫りが深くて形のいい輪郭の彼は十分格好良かった。 あの格好のときは私だけの彼 もう緑のカップルにはなれないんだと思うと胸がキュンと軋む。 これから彼を見れるのは雑誌の中だけ。 私はファンの一人で、彼の特別じゃなくなるんだ。 そんなことを思っていると閉じた睫毛が濡れてくる。 そのとき、ゆっくりと扉が開く音が微かに聞こえた。 生徒はまた授業の最中だから急病以外は来ないだろう。静かに開け閉めするのは先生が私を起こさないように帰ってきたのか?それにしても早い。忘れ物かな…? ゆっくりカーテンが開く音がして目をやると 高村くんがいた。
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