第1章

9/32

6人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
私のために辞めたら、私がその芽を摘んでるようなものだ。 それはきっと私の負い目になる。 私さえいなければなんて思いたくない。 「何で高村くんが私を守るの? 私達は別れたんだよ。 高村くんは自分を守ることを考えて。 もう熱も下がったみたいだし、一人で帰れるから。」 「夕貴はそれでいいの?」 良いわけ無い!気持ちはいつでも高村くんの側にいたいよ。仕方ないじゃない。どう考えても今高村くんと一緒にいることを望めないんだもの。 どんなに好きでも高村くんの気持ちに甘えられない。 彼には彼の未来を信じてサポートしてくれる仲間がいる。 例え彼がモデルを辞めて私を守る道を選んだとしても、またきっと彼を苦しめる。 それがわかるから… 泣きたい気持ちになるのを必死に堪えて頷いた。 「分かった。 俺の最後のわがままだから、夕貴を送らせて。 もうすぐ迎えの車がくる。一緒に乗っていこう。」 「う、うん。」 車なら直接回りに見られなくて済む。 これが彼に甘えられる最後だ。 さっきから胸が痛むけど顔には出せない。必死に平静を装っていた。 他の生徒は授業中だから人気は無い。最後なのに話す言葉が見つからなくて、もっとくっつきたいのに歩く二人の間には人一人入れる距離がある。 これが別れた今の二人の心の距離だと思うと悲しくなった。 校門の外に出ると、窓にスモークを張った怪しげな黒のワゴン車が止まっていた。 車のドアを開けて運転手と何か話をしていたが、話がついたのか高村くんがこちらに乗るように促す仕草。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加