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「遙奈はさー、その、最近どう?」
東京駅直結のカフェに足を運びランチを食べながら友紀と近況を報告し合う。
「んー、何も変わらないかな。仕事もぼちぼちだし、特に変わらないよ。友紀は?」
友紀に会うのは半年ぶり。今年の年末年始に実家に帰った時に会って以来だ。
小学校から同郷で、仲良くなったのは高校生になってから。そのまま今も関係が続いている。
「あのね、私、今年の12月に結婚することになったの」
「えっ!? ほんとに?」
「うん」
「相手は? あ、前に話してた会社の人?」
「うん。遙奈には直接伝えたかったんだけど、結婚式、来てもらえる?」
「もちろん!」
嬉しい報告の割には友紀の表情が晴れていない。
「……友紀?」
「あのね、遙奈……実は、」
その続きを聞いたはずなのに、遙奈はよく思い出すことが出来なかった。
足取り重く東京駅を後にしたのは夕方のこと。
――彼の友人に【柊 陽介】って名前の人がいたの。まさか、と思って聞いてみたら……陽介君だった。
世間はどうしてこうも狭いのだろうか。
友紀の彼の友人であれば陽介とは結婚式で会う事になるだろう。
医師になったことは風の噂で聞いてたが、まさかこんなことになるとは誰が思うだろう。
今日会ったのはもしかして知っていたのかもしれない。
6月がもうすぐを終わる。
遙奈にとって憂鬱な季節が始まろうとしていた。
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