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あれ、陽介ってこんな顔してたっけ?
いつも見ていたはずなのに。
陽介が陽介に見えなくて、遥奈はボーッとその顔を見つめていた。
「……なんて顔してんだよ」
ポツリと呟かれた言葉を辛うじて拾うと同時だった。
近い。近い近い近い。
陽介の顔が近すぎる。
逃げられない。
全部、聞こえてんだっつーの
そんな言葉が聞こえてハッとした。
思い出したかのように抵抗する。
「よ、ようす……っ!」
「無防備な遥奈が悪い」
いつだって陽介は優しかった。
幼なじみ以上の感情を抱いたまま離ればなれになるのだと思っていた。
力はもう陽介の方が強くて、背だって身体だってもう陽介は男の子ではない。
「っ、 ――やっ!」
陽介が嫌なわけではない。
でも口から勝手に陽介を拒む言葉が出てしまう。
だって、あたしは――
「……冗談、だよ」
傷つけた。
それは陽介の表情から分かった。
スッと離れて机に向かった陽介に声を掛けることもなく、遥奈はただただその背中を見つめることしか出来なかった。
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