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即座に言い返すジェラルド警部に、まずいと思った。
ここをすんなりと抜け出せない場合、この男性は、何をするか分からない。
「……そうですか。では、無事に家までお送り致します」
変わり身の早い男性に、ジェラルド警部は訝しむように眉間にシワを寄せ、ジッと顔を見つめる。
「………お前、誰だ?警察の人間じゃないだろ」
「………」
正体がバレたというのに、男性は慌てる様子もなく、ニヤリと笑った。
その笑いが、何処か残忍に見えて、ぞくりと寒気を覚える。
「おい、聞いて…」
「離れて下さい!!」
私が叫ぶのと、ジェラルド警部が吹き飛んだのは、ほぼ同時だった。
「………っ!」
突如として現れた火の塊に吹き飛ばされたジェラルド警部は、その衝撃で地面を二度三度と転がりながらも、衣服についた火を消す。
「ジェラルド警部!!」
名前を呼んで駆け寄ろうとした私の手を、男性が掴んで引き止めた。
「離して下さい!」
「何だ?犠牲者を、もっと増やしたいのか?」
酷い!
何も、あんな目にあわさなくても!!
感情が昂り、目に涙が浮かんでくる。
それでも、負けたくなくて、必死に涙を堪えて睨むけれど、怒りの感情が強くなればなるほど、止められない。
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