動き始める歯車

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そんな……。 目の前に広がるのは、まさに地獄のようだった。 プツンと何かが切れたように、その場にへたり込む。 そんな私を眺めながら、男性は愉快そうに声を出して笑い出した。 「いいな、お前。俺好みの人間だ」 ………この人は、何を言っているんだろう。 どうして、何の罪悪感もなく、こんな酷い事が出来るんだろう。 こんな光景を前にして、笑っていられるんだろう。 「………あなたは、誰なんですか?」 呟くようにして問い掛けた私に、男性は悠然と答える。 「アトロディア。お前の運命を握る者だ」 絶望。 こんな時の気持ちを表すとしたら……その言葉しか浮かんでこなかった……。 もう終わりだ…。 この人には、何があっても敵わない。 神様になんて、敵う筈がない。 全てを諦め掛けた時、ソレは起こった。 何処かに身を潜めていた筈のノワールが、突然、私の手元に飛び込んで来た。 それと同時に、私の周りが光り出し、目の前がぼやけ始める。 不意を突かれ、驚愕に目を見開く男性の顔を見たのを最後に、目の前が真っ暗になった。
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