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*動き始める歯車・9*
気が付くと、そこは見覚えのない建物の中だった。
湿気が多いのか、少しカビ臭い。
「サクラ」
呆然とする私に声を掛けたのは、腹黒師匠、アルフォンスさんだった。
「………」
何だろう…。
凄く懐かしく感じてしまう。
たった、半日の間、会わなかっただけなのに。
知らず知らずのうちに涙が溢れ、ポロポロと頬を伝い落ちていく。
そっと手で涙を拭ってくれたアルフォンスさんの手の感触に、会いたかったんだと気が付いた。
この人に、会いたくて仕方がなかった。
無事で良かった。
もう、二度と会えないかと思った。
そんな様々な感情が溢れて、涙が止まらなくなる。
「アル…フォンスさ…」
「君、馬鹿なの?」
……………………へ?
突然吐き出された毒に、目が点になった。
思わず涙も止まる。
「何で、一人で行動する訳?何?君って、そんなに強い訳?一人で何とか出来るなんて思ったの?馬鹿じゃない?いや、馬鹿だよね、実際」
……………こんな状況で。
容赦ない毒攻撃に、もう為す術もない。
苛立った顔で睨まれて、再起不能に陥る。
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