動き始める歯車

39/60
前へ
/167ページ
次へ
*動き始める歯車・9* 気が付くと、そこは見覚えのない建物の中だった。 湿気が多いのか、少しカビ臭い。 「サクラ」 呆然とする私に声を掛けたのは、腹黒師匠、アルフォンスさんだった。 「………」 何だろう…。 凄く懐かしく感じてしまう。 たった、半日の間、会わなかっただけなのに。 知らず知らずのうちに涙が溢れ、ポロポロと頬を伝い落ちていく。 そっと手で涙を拭ってくれたアルフォンスさんの手の感触に、会いたかったんだと気が付いた。 この人に、会いたくて仕方がなかった。 無事で良かった。 もう、二度と会えないかと思った。 そんな様々な感情が溢れて、涙が止まらなくなる。 「アル…フォンスさ…」 「君、馬鹿なの?」 ……………………へ? 突然吐き出された毒に、目が点になった。 思わず涙も止まる。 「何で、一人で行動する訳?何?君って、そんなに強い訳?一人で何とか出来るなんて思ったの?馬鹿じゃない?いや、馬鹿だよね、実際」 ……………こんな状況で。 容赦ない毒攻撃に、もう為す術もない。 苛立った顔で睨まれて、再起不能に陥る。
/167ページ

最初のコメントを投稿しよう!

272人が本棚に入れています
本棚に追加